特別対談


大倉 貴之
InfoMaker主宰。
「Headline-Reader」「Headline-Deskbar」などRSS/Atom関連ソフトの開発者。
「Headline-Reader」は書籍『Blog Hacks』においても「非常に高機能で人気もある」と紹介されている。

洛西一周
「紙copi」「NOTA」開発者。
平成14,15年 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)主催「未踏ソフトウェア創造事業」に採択。
平成15年 同事業において「天才プログラマー/スーパークリエータ」に認定される。


「紙copi」と「Headline-Reader」の連携

洛西
大倉
はじめまして InfoMakerの大倉です。
オンラインソフトウェア作家としては大先輩の洛西さんにお逢いできるとは!
洛西
はじめまして、洛西一周です。よろしくお願いします。
大倉
Headline-Readerのユーザー様からのメールの中に『紙copi使ってます』というものが結構寄せられます。『紙copi以来の感動です』『初めて買ったソフトウェアが“紙copi”で次が“Headline-Reader”です』『この2つのソフトは絶対に手放せません』このような嬉しいメールです。
洛西
なるほど。僕のところには、来ませんねえ(笑)。Headline-Readerを使ってみましたが、よいソフトウェアですね。最新の技術を組み込んでいるのに、画面構成がシンプルで、効果音などがかわいらしい! これなら「紙使い」のユーザーさんにも気に入っていただけると思いました。
大倉
実は、私自身も紙copiのユーザーです。スケジュールやToDoなどをテキストで管理する習慣がありましたので、テキストファイルの管理機能が強力な紙copiは私のニーズに非常に合ったソフトウェアです。
洛西
紙copiはスクラップブックソフトとして定着していますが、元々はテキストエディタだったんです。テキスト編集や管理の機能を評価してくださると、うれしくなります。
大倉
次に紙copiとHeadline-ReaderをインストールするとHeadline-Readerでブラウジング中のページを紙copiに簡単にスクラップできること。これは強烈ですね!
Headline-Readerで用意されている『お気に入り』にURLのショートカットを保存するという方法もありますが、変化の激しいインターネットの世界では社名変更に伴ってURLが変わったり、引っ越ししたり、サービスが中止になったりと『しまったー』(笑)という場面が多々あります。その点、紙 copiならマウスからの簡単な操作でファイル名なども意識しないでスクラップが可能です。とにかく、その便利さは言葉だけでは説明し切れません。非常に快適です。
洛西
ありがとうございます。発表当初(2000年頃)は、ブロードバンドもなく、インターネット通信料を節約するために紙に取り込んでおいて、後から見るという用途が多かったのですが、最近は後で探せなくなると大変だから、という理由で紙に取っておくというのがもっぱらの使い方です。Headline- Readerには毎日のように新しい情報が入ってくるので、Headline-Readerを使う人は、大量に「紙」を消費することになりそうですね (笑)。

ソフトウェアの開発動機は?

大倉
大倉
ところで洛西さん、“紙”の開発動機についてはkamilabo.jpのページでも紹介されておりますが、誰かのために作成したというだけでは、これだけ汎用性と品質の高いソフトウェアは完成しなかったとおもいますが、私が興味を持っているのは“どの部分に着手しているとき” に夢中になり始めた訳でしょうか?技術的に困難な部分や、感性に訴えかける部分や、操作面で予想以上の成果が得られたときに興味が加速するケースが私にはありますが。
洛西
僕の開発スタイルは単純で、まず、「こうなったらいいな」とソフトウェアが実際に動いている楽しい場面を想像して、その後、それを実現するための技術的な問題を解決していきます。技術面での実現のために、インターネットで情報を探したり、技術書を読んだりすることはありますが、開発に必要のない技術には手をつけたことがないんです。今のコンピュータは、思い描いたことがなんでもできるかというと、そうではありません。「機械」なので、様々な制約があります。最初に思い描いた機能が、今までにない面白さを持ったもので、それが妥協無く実現できたときに、一番夢中になりますね。 汎用性や品質については、いつもシンプルなソフトウェアを作るということを心がけています。複雑な機能を多数搭載し、それをユーザーにカスタマイズさせて利用させるソフトウェアが多く見受けられますが、実は、「シンプルなもの」がもっとも汎用性のあるものだということに気づいて欲しいですね。
大倉
紙copiの今後も気になるところですが、何か企んでませんか? 私自身としてはRSSに関する取り組みの予定などが気になるところですが(笑)。 それ以外の計画に付いてもユーザーを代表し、差し障りのない範囲でお聞きしてみたり(笑)。
洛西
企み、ですか。今は、Webや通信、コミュニケーションのためのインターフェイスの改善に興味があります。「糸電話」インターフェイスというのを考えてみたり。また、情報技術の普及によって、人々のつながりやコミュニティがどう変わっていくかといった問題を考えるのも好きですね。 RSSは検索とパーソナライズがこれからの鍵になると思います。Webページの概要が手に入るのは、情報を効率的に管理するのにはとても有り難いのですが、RSSがもっと増えると、自分に必要なRSSを探すことが困難になってくるのでは? 例えば、自分の興味関心をブログ等で発信し、それに合わせて、 RSS情報が送られてくるような、興味関心をベースにしたソーシャルネットワークサービスなどが登場するんじゃないかな。あ、言ってしまった(笑)。
大倉
それは興味深いですね。期待してますよ。

使いやすさの追求

大倉
既にHeadline-Readerと紙copiの連携の快適さは説明しましたが、Headline-Readerはブログは勿論のこと、RSS対応のニュースサイトからの情報収集などのビジネスユースにも十分にご満足頂けるように作成しました。キーボードやマウスを使用した場合の微妙な操作感、RSS やAtomの解析能力のチューニング、検索・絞り込み・フィルタ機能などの充実などがそれにあたります。細かい機能は好みの問題が含まれますが、これらの機能はユーザー様を困らせない、疲れさせない為の取り組みです。非常に目立たないものが多いのですが紙copiでも当たり前のように行われている気がします。
洛西
そうですね。紙copiの操作方法は当初から変わっていないものもありますが、ユーザー様からの要望などを受けて試行錯誤を繰り返し、少しずつ変更してきました。その結果が今につながっているのだと思います。こういった所は、カタログやマニュアルには現れないのですが、開発者がちゃんと考慮していれば、使えばすぐに分かります。いつも使い勝手を改良する余地はないだろうか、と考えています。紙copiとHeadline-Readerは、一ヶ月は無料で体験できるので、ぜひ、ダウンロードして実際に使ってみてもらいたいですね。
大倉
必要な情報をドンドン収集して、その中から特に重要なものは紙copiにスクラップ。私も経験者なのですが、紙copiを使わずにデータをドンドンとファイルに保存するだけではフォルダ内やデスクトップがファイルで溢れかえってしまいます。紙copiならば一覧のソート機能を活用して賞味期限が切れてしまったような情報の整理が簡単にできますね。私の場合はデータの保存は勿論ですが、賞味期限切れのデータを簡単に整理できることの快適さを特に強調したいですね。
洛西
できたてほやほやの情報を取ってくるのがHeadline-Reader、賞味期限を越えて情報を整理できるのが紙copiということでしょうか。本日は、有意義なお話をどうもごちそうさま...いえ、ありがとうございました。